インタビュー

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コーチングのこと
傾聴力のこと
中村舞のこと

取材を受けた編集前のインタビュー内容を、了承を得て一部抜粋して掲載いたしました。

(取材協力:ライター 宮本育さん)
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「コーチングとの出会いのきっかけは?」

コーチングのセミナーがあるというので、面白そうだなと思って参加したのが最初のきっかけです。そのセミナーで具体的な話を聞いたらコーチングに魅了されて、「私はこの仕事をする」と直感で決めました(笑)セミナー終了後、自転車に乗りながら、「どうやったらコーチになれるのか?」を考えながら帰ったことを今でも覚えています。30歳くらいのときでしたね。

 

 

「コーチングのどんなところに魅了された?」

 

コーチングを学び始めた当初は、相手に「問いかける」ことがコーチングの仕事だと思っていました。問いかけることでやる気や気づきを引き出していくものだと。この【問いかけて引き出す】という関わり方が、私が20代のときに、自分自身にずっとやっていたことでもありました。

というのも、中学から10代の終わりにかけて、両親と兄弟が3人次々と亡くなって、とても大変な状況だったんです、金銭的にも、精神的にも。でも周りに心配をかけたくないので、普段は家庭の事情は隠して外では笑顔で生活していました。その分、悲しみや孤独感などのマイナスの感情が、心の奥にずっと残ったままでした。

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どうやったら心の傷を乗り越えられるのかを考えて、色んな本を読みあさりました。その中で、自分の感情をしまいこまずにきちんと感じることや、自分の幸せや喜びは何かを明確にすること、普段考えていることや行動のクセを見直すことが大事だとわかり、自分に問いかけることを通して自分と向き合いました。

それを実践していくと、自分を力強く感じられるようになり、過去を乗り越えるのにとても効果があったんです。

それからは、何かあるたびに自分に問いかけて、自分の何を変えられるかを考えるようになりました。コーチングを初めて知った時に、「問いかけは私がずっとやってきたこと。私にはできる」と思ったんです。むしろ、「これは私の仕事だ」くらいにまで思った(笑)それが惹かれた理由のひとつです。


「自分自身に問いかけをしていたというのは?」

例えば「どうして〇〇さんの言うことにだけ反応してしまうのか?」とか、「自分が本当にやりたいことは何だろう?」とか、「この習慣を変えるにはどうしたらいいんだろう?」とか、ひたすら自分の答えを見つけるということをやっていました。



自分への問いかけを通して、自分が本当にしたいこと、自分の価値観の再確認、本音(本当はこれが嫌とか、こう思ってるなど)、悲しみや怒りなどのマイナスの感情、良い気持ちであってもずるい気持ちであっても、そういうものを直視して、自分に嘘なく生きていきたいという思いがありました。それと「コーチング」がとてもマッチして、私はコーチングができると思ったんです。でも・・・そこからがとても大変でした(苦笑)
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「大変とは?」


コーチングは相手への問いかけ・質問力があればできると思っていたのですが、そうではなかった。コーチングは「傾聴」そのものなんだということがわかったんです。

スクールでお金をかけて学びましたが、練習しても結果がでるコーチングができるようにならない。そもそも相手の状態にあった質問すらできない。

どうしたらコーチングができるようになるのか、ものすごく悩みました。あるとき「傾聴」ができていないことに気がつきました。
まず、相手から信頼され、本音を話せる関係づくりや場づくりができてない。相手が本音を話してくれなければ、相手の課題にも近づけない。本音を話してくれても、それを正確に聴取らなければ、課題に合わせた質問もできない。それで「コーチングは傾聴力なんだ!」と気がついたんです。  

でも、気がついたときは傾聴力はゼロ。コーチングのスクールで知識は学びますが、傾聴力はスポーツと同じ、練習を重ねないとできるようにならない。ですので傾聴力を磨くということを徹底的に独学で実践しました。24時間、寝ているとき以外は、ずっとそのことだけを考えました。誰と会話していても、何をしていても。何とか傾聴ができるようになってきたかなと自信を持てるようになったのは3年くらい経ってからです。


「傾聴のトレーニングは具体的にどんなことをした?」

会話の中で集中して聴くということを続けました。相手が何を伝えたいのかにアンテナを向けて。あとは、相手が言ったことを自分の色眼鏡(価値判断)なしで受け止める。これがすごく難しかった。自分の考えや価値観とは違っても、あなたはそうなんだねと受け止めていく。コーチングは、心の広さ、受容力が必要なんです。この心の広さが私にはなかったし、今でもそこは難しいと感じることがあります。
仕事ではできても、日常では本当に難しい。

さらに、聴いた話を頭で整理していく。声だけでなく動作や表情からも情報を拾いつつ、ペースを相手に合わせる。これら全部を同時にできるようになるのに時間がかかりました。あとは、心を開いてもらわないといけない。一度も会わずに電話だけでセッションが始まる人もいる。その人が心を開いて話をしてくれる場を作る技も、無意識でしたが身につけていったと思います。  




 「仕事以外でもそういうスタイルで話を聴いている?」

プライベートでは難しいです。相手の話にすごく集中しなければならないので。ただ、仕事以外でも、人と会うときに相手に心を開いて関わるようにはなりました。どんな人だろうと関心を持ったり、一対一で会話するときは、コーチングセッションの時ほどではなくても、聴くモードになることも多いです、癖がついたんですね。
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時には傾聴力を使って仕事のマニュアル作成も
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「心を開くきっかけになったことはあるか?」

自分では気がついていなかったのですが、傾聴のトレーニングを始めて3年ぐらいたった時に、周囲から何か変わったねと言われるようになったんです。どうしてそう言われるのかなと考えたのですが、聴こうとするようになったからかなと。

そもそも、相手の話に耳を傾けるためには、自分の心を開く必要があるんです。教えて下さいとか、あなたのことが知りたいですとか、心を一歩相手に近づけている状態。そうすると、相手も心を開いて話してくれる。
聴いているときは、私の表情が柔らかくなっていると思う。批判もしないし、相手の話や考えを無条件に受けとめる。その関わり方が日常でもクセになり、それで変わったと言われるようになったのだと。傾聴力の凄さを初めて実感しました。
 


「そうなると周囲の中村さんへの態度も変わってきた?」


はい。相手もより信頼してくれるし、私も人に対する態度が変わったと思います。今まで苦手だった人が苦手じゃなくなり、相手を受容していくことで、人間関係のストレスもなくなりました。また、自分の性格も受け入れられるようになりました。人の性格を受容できるようになると、自分も自分のままでいいんだなと思えるようになるんです。
人間関係の悩みが一気に解消されていった私自身の経験もあって、傾聴力は素晴らしいなと思うようになりました。


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「現在、企業に対してどのような研修をやっているのか?」

現在は講習内容が多岐にわたっていて、4月の新人研修からスタートして、管理職向け研修、コーチング、コミュニケーション、メンタルヘルス、ホスピタリティ、ビジネスマナーなど。セルフコーチングで目標達成や自分発見というジャンルもあります。

その中でもやはり、「傾聴力」や「関係性の構築」は、10年以上研修先で現場の声を聴いてきて、全ての仕事や関係性、指導のスタートとなる大事なスキルだと気がつきました。できるだけそれらも取り入れた内容の研修を作成しています。

企業だけでなく、大学や専門学校でも傾聴力を教えています。


「傾聴力や関係性の構築が大事というのは? 」 


私のメインはコーチングや管理職向けの研修なのですが、現場の声を聴いているうちに、そもそも相手が本音を言える関係性が作れていないと気がついたんです。本音を言ってくれないとコーチングもできないし、アドバイスも届かない。「実は辞めたいと思っています」とか、「実は仕事がつらい」とか、「これをやりたい」とか、そういった声を出せない関係になっている。

「相手のことを知っている、ちゃんとアドバイスもできている」と思っている上司ほど、実は全く部下のことを把握できていなかったり。 では、どうして出来ていないのか、何が足りていないのかと考えた時に出てきたのが「傾聴力」でした。

そもそも、「どんな人なんだろう?」と相手に関心を持っていない。「何が得意なんだろう?」「仕事のやりがいは何だろう?」「何がストレスになるのかな?」など知ろうとしない。知ろうとする代わりに、「ここが足りない」「こうしなさい」と自分の考えだけに関心を持って相手と関わっている。 聴こうとしても、色眼鏡で見る、否定する、相手に話のペースを合わせるなど、そもそもの聴くスキルも持っていない。 相手からすると、自分に関心がなく、何か言っても批判判断をされる人には本音を言いづらい。

コーチングする上でも傾聴力が必要ですが、「関係性の構築」のためにも傾聴力が必要なんです。どれだけいい指導をしたくても、自分が相手に歩み寄れていない。だから、相手も歩み寄ってこない、信頼してくれない。

面白いのは、管理職向けのコーチング研修などでは、「僕たちのさらに上の管理職や社長にも学んでほしい」という声が必ず出るんです。「上の立場の人たちも自分たちのことを理解しようとしてくれない。現場がどういう状況で、自分たちが今どのような仕事をしていて、どんな苦しみや夢があるのかを、知らないし聴いてくれない」と。

私は、会社の規模が大きくなるほど、社長は社員一人ひとりに傾聴をする役割をするべきではないと思っています。もちろんできるに越したことはない。でも、社長には社員一人ひとりを把握する時間がないし、リーダーとしての役割がある。 だから、まずは社長は自分の直近の部下の声を聴く。その部下はさらに自分の部下の声を聴く、という流れができるのが一番いいのかなと。そう考えると、社員すべての人に傾聴力は必要なのではないか?と思うようになりました。

ちなみに、社長の話を聴く人がいないんです。片腕のような存在がいる方はいいのですが、一人で悩みを抱えている社長も多い。なので、私のようなコーチを雇って話す方も多いです。または、聴き上手なスナックのママとかに話す方もいらっしゃいますね。

一番、もっとも声を聴かなければいけない相手は「お客様」ですよね。お客様の声をきく、様子を伺う、関係性を作り、ニーズを知り、それにあわせて製品やサービスを提供していく。マーケティングですね。

傾聴力がないということは、顧客の声すら聴けてない可能性があるかもしれない。そうするともちろん会社も上手くいかない。そんなことも思うようになりました。


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「舞さんが研修や講座などでも伝えているという「聴き役会話」というものは?」

聴き役になって会話を作ってみましょうというものです。傾聴のスキルでもある「否定しない・批判しない」を意識しながら、最低2分間は話を聴いてみる。それを1日1回以上実行してもらい、傾聴の形を身につけてもらうものです。

例えば、「昨日何やっていたの?」と声をかけて、相手が「友達と飲み会でした」と答えたら、その飲み会ネタで2分間ひたすら相手の話を聴く。

ただ、黙って聴いていると「この話は面白くないのかな?」と相手は話してくれない。なので、相槌やうなづき、時には「すごいね!」「本当?知らなかった!」「楽しそう!」など賞賛や共感の言葉も取り入れてしっかり反応し、もちろん関心を持って問いかけもしながらの時間です。


2分間という時間にしたのは、聴くのは集中力が必要で大変だから。
でも2分くらいなら、皆さん楽しみながら聴くことができるし、実際やってみるとわかるのですが、2分でもかなりの相手の情報が入ってきます。好奇心旺盛な人なんだとか、こんなふうにストレス解消しているんだとか、今まで見えていなかった別の一面が見えてきて、そこで得た情報を次の会話や指導に活かすこともできます。

また、普段2分「も」話を聴いてもらえることって少ないんですよ。大抵はすぐに「俺はさ・・」「私はね・・」と相手に取られてしまう。ですので、2分でも聴いてくれる人がいたら、「なんていい人なんだろう」「この人は話しやすいな」「分かってくれる」とその相手に心が開いていく。聴き役会話を続けているだけで「実は・・」と相手から本音を話してくれるようにもなるんです。

相手が何かに悩んでいる時は別ですが、日常会話であれば1回2分でも充分に練習ができ、相手を知ることができ、関係づくりにもプラスになります。もちろん時間があれば、5分でも10分でも構いません。

まず、「聴き役会話」をマスターする。これを社員全員、または家族や友達との間でできるようになって、その上でのコーチングの傾聴力や質問力をさらに磨いていくと良いのではないか?と私は思っています。

 

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40代になってから始めた海外バックパッカーひとり旅。ラクダに乗ったり民族衣装を着たり、好奇心の赴くまま楽しんでます(*^^*)
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「傾聴力が身につくには長い道のりが必要なんですね」

そうですね。ただ、「聴けるようになること」のメリットは計り知れないです。
私は「8つのメリット」と言っていますが、


「相手の本音がわかる」

「相手のことを理解できる」

「相手の状況に合ったアドバイス・サポートができる」
「好かれる・信頼関係が築ける」
「思考力・想像力が養われる」
「こちらの話も聴いてくれる」
「相手の話を聴くことで自分も成長する」
「会話上手になれる」

傾聴にはこれらのメリットがあるんです。

 

特に「信頼関係」「本音がわかる」「理解する」「適したアドバイス・サポート」「こちらの話も聴いてくれる」については、指導者や誰かをサポートする仕事、他者を動かす立場にいる人は絶対に必要なもの。

 

傾聴力を身につけると、なぜか「会話上手」という印象を持たれるのも面白いところですし(相手にとって楽しい会話を作ることができるので)聴くことで、本を読むのと同じ量の知識が入ってくる。しかも、他者の視点や思考、経験の追体験ができるので「人の心理」についても学べますし、そこから人や状況のことを「想像する力」も養われる。

 

さらに傾聴力を強化していくと、会話や行動を見ているだけで、相手の考えなどを推測できる「推測力」も身についていく。ここまでくると、人を動かすのがとても上手になるんです。「あ、このパターンの人にはこの言葉がぴったりだな」などわかるようになる。

 

これだけのメリットがあって、しかも、営業などお客様にも活かすことができる。徹底して傾聴する姿勢が信頼関係を構築し、本音を引き出し、細部にまでこだわった期待値を超えるサービスを提供できる。仕事のすべてにおいて通用できる。

 

また、傾聴力が身につくと、苦手な相手とのやり取りも楽しくなってくる。嫌なことを言われても、どんなタイミングで何を言ってくるのか予測できるようになるし、その場面において、さてこちらの出方をどうしようか?など、その状況を楽しめるようにもなってくる。お互いがもっと楽に、もっとプラスになる関わり方が傾聴であると私は思っています。

 

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「相手に心を開き話を聴く。そういったコミュニケーションを怖がる人は最近多いのでは?」

確かにそうですね、傷つきたくなくて壁を作っている人も多いなと思います。でも同時に、その壁があるこその苦しさもある。

もっと打ち解けたいのにできないという葛藤などですね。壁を越えるには、自分が心を開くしかないし、最初は怖くてもどこかで一歩踏み出さないといけない。それが少しずつでもできるようになると、怖さよりも喜びが増えてくる。

最終的に人が怖くなくなったら、自分が楽になるし、生きやすくなるので、まずは最初の一歩からチャレンジしてほしいなと思います。

 

「傾聴やコーチングに関する研修を体験した方の声は?」

「部下の話を本当に聴いてみたら、自分が考えていたことと全然違っていて、とても驚いた」という声をよくいただきます。今まで理解していると思っていたけど、何も知らなかったことに驚き、そこから本音の会話ができるようになったなど。

 

「こちらが聴く姿勢になるとここまで話してくれるのか」という声も。聴き役会話でたった2分間、相手の話に耳を傾けただけで、普段は口数の少ない人でも色々話してくれたなど。その経験から、いかに自分が相手の話を聴いていなかったかを実感したという声もいただきます。

 

コーチングのスキル(コーチング研修)では、承認というスキルがあります。いわゆる「褒める」ことなのですが、お世辞ではなく、少しでも頑張っているところや相手の良いところを見つけて、声をかけて言葉で伝えるスキルです。コーチングは難しいから褒めることからまず始めたら、それだけで部下の表情が変わった、部下から話しかけてきたなどの声や、自分がいかに褒めたり、励ましたりしていなかったかことを痛感した話などをいただくことも多いです。

 

コーチングができるようになるには、練習が必要です、傾聴をマスターしつつ、さらに相手の力を引き出す関わり方や問いかけを学んでいく。習得には繰り返しの練習が必要ですが、傾聴やコーチングの関わり方が身について習慣化されれば、一生使うことができる。上司や親が傾聴やコーチングを習得すれば、その姿を部下や子どもたちが見て、それを真似ていく。企業や家族内で習慣化されたら、日本全体が変わるのではと、本気で思っています。

 

私の役目は研修でスキルを教えること、傾聴やコーチングがいかにメリットがあり具体的な効果があるかを示すこと、普段の関わりのどこを変える必要があるかを発見してもらうこと、そして傾聴やコーチングができるようになりたい、活用したいというやる気を生み出すことです。


でもスキルの習得と習慣化は個人の努力になる。そこは会社の理念にあわせて、仕組みそのものを変えていくといいケースもあるかもしれません。例えば朝、朝礼の終わりに2分間傾聴を全員で行う。会議の時は絶対に否定しないでどんな意見も受け止める、面談時に傾聴力を取り入れるなど。

 

ご相談があればいつでもお受けいたします(笑